2021年4月11日日曜日

ルールを期待に置き換えよう

ウィズ・コロナ2年目の新年度がはじまりました。長かった職員会議、夢にふくらむ始業準備からようやく1週間を終えて、子どもたちとの出会いにほっとしたこの週末ではないでしょうか。それも束の間、来週から押し寄せてくる授業、クラスづくりなど、何から手をつけていいのか一抹の不安もあることでしょう。このPLC便りから少しでも具体的にやってみたいことを見つけ、元気になってもらえたら嬉しいです。

 

新学期、学校にはルールが何かと多いもの。公立校で勤務したとき新年度最初の職員会議で、管理職から事細かな指示にげんなりしてしまいました。 今でも「○○先生と呼び合いましょう」と、子ども同士だけではなく、教員同士の呼唱まで規定している学校もあるとききました★。ちょっとしたことかもしれませんが、次々と一方的に押し寄せてくる窮屈なルールに違和感を感じる方が多いはずです。

 

学校は何かと管理したがります。不安なときこそ些細なことまで管理します。何よりも、それが無自覚に行われていることに気付かずに、よかれと思って細かいルールを通達しているところが大きな問題です。コロナ禍における感染対策にしても、私たち教員からの現場の声や生徒たちの声が管理職や教育行政へどれほど届いているのか疑問もあります。

 

一律ルールを決めて、全員が同じ行動をすれば管理者は安心しますが、同時にルールの受け手は課題意識が削がれ、自分でものを考えようとしなくなります。このような教師や生徒を育ててしまっていないでしょうか? 若い教師こそが萎縮せずに声を挙げられる職員会議になっているのでしょうか? 学校運営から透けて見える管理する手っ取り早さは、また無自覚に各担任する学級づくりのモデルとして同じようにルールを決めようとしかねません。このようなぎちぎちのルール管理下で、教師も生徒もどうやって民主的な方法を学び(練習し)、世界を変えようとすることや自分にもその変えられる力(エイジェンシー)があることを実感できるのでしょうか?

 

ルールの持つ弊害をクリアしていくために、「ルール」を「期待」に置き換えてみませんかという提案です。今回は前回に引き続きネイサン・メイナード、ブラッド・ワインスタイン著『生徒指導をハック』の第4章[「ルール」を「期待」に置き換える]からの紹介です★。

 

教室に、些細なルールをつくろうとする問題点は何でしょうか? ルールは防ぎたい特定の行動群に焦点化するあまり、他の場面への運用や状況が変わった場合の対応が難しいところです。また、あらゆる時代に適応できるものでも決してありません。

 

“「授業中には水筒のお茶を絶対に飲んでいけない」と言うことを教えたいことでしょうか。それとも、集中して授業受けているときには邪魔にならないようにそっと飲むこと(他人を尊重すること)や、こぼさないように適切に扱う方法を身に付けてもらうこと(教室を安全で清潔な環境をたもつこと)が目標でしょうか。”(同書P.89より)

 

通常、ルールは行動規範を子どもたちに教えるだけで、多くの場合に特定のケースにしか適用できません。そこで「ルール」を「期待」に置き換えるのです。 

 

“生徒は何をしてはいけないのかではなく、どうすれば良いのかについて理解することが重要なのです。教師は、生徒の人生を豊かにすると言う目的に邁進すると同時に、その目的のために寄せる高い期待に生徒が到達できるように必要なツールを生徒自身が身に付けられるように支援しなければなりません。私たち教師が生徒に臨むこと、生徒同士がお互いに対して望むこと、生徒が自分自身に望む事について明らかにすることから始めるのです。これらは「ルール」ではなく、「期待」と考えることが重要となります。”(同書P.90〜91より)

 

「ルール」に比べると「期待」は幅広いように思えますが、より広い視野で考えることを可能にしてむしろ自由度を増し、柔軟な対応ができることになります。教室を理想的な状態にするにはどうすれば良いかについて全員で共有したいお互いに期待する行動リストをみんなで話し合って作成することから始めましょう。そして「期待」はすべての生徒に対して同じように掲げ、みんなで共有しましょう。

 

    クラス・ミーティングを行う

これまでに「安全で尊重されている」と感じたクラスや、学ぶ環境が整っていたクラスとはどのようなクラスだったかを振り返り、リストを作ります。そして次に、全く反対のタイプの教室や教師についても思い出してリスト化します。

 

    一歩引いて客観的に捉えてみる

リストを全体的に眺めてみると、居心地が良かったクラスでは細かいルールではなく、どのようにすれば良いのかと言う「期待」に支えられていたことに気づくはずです。先ほど作ったリストを参考にしながら、自分のクラスにおける「期待」を生徒と一緒に作りましょう。

 

    簡潔にする

全てを網羅し徹底して詳細なルールを羅列してリスト化する事はほぼ不可能です。「あなた自身を、みんなを、モノを大切にしましょう」といった簡潔で心のこもった「期待」に。

 

このリストは事前に生徒とその都度確認します。それでもトラブルは起こるもの。そのとき起こった具体的なエピソードと「期待」を照らし合わせながら振り返り、リストを実感あるものへと磨いていきます。特別な支援が必要な生徒への対応方法へのさらに詳しい対応は本書に載っていますので、参考にしてください。

 

私たち教師は日々の教室における生徒の行動がルールにかなっているかに目を奪われるあまり、前向きな文化交流に気を配ることを忘れがちとなっています。生徒にとって教室を素晴らしい場所にするために必要なのは、正しいルールではありません。そのために必要な事は、良い人間関係とお互いへの期待を共通理解することなのです。

 

期待、それは一人ひとりの願いです。

 

 

呼び名こそお互いの関係性です。それは第三者に決められることではなく、人との関係をつくっていくことからはじまるもの。

 

★★

PLC便り「コロナに負けるな! サークル(輪)になろう」2021314日(日)

http://projectbetterschool.blogspot.com/2021/03/blog-post_14.html

もう一つ、ルールではなく年度の最初に生徒たちに期待を明確に提示している実践があります。世界で最高の先生の賞を最初に受賞したナンシー・アトウェルのリーディングとライティング・ワークショップの実践です。詳しくは、92~104ページを参照ください。彼女の場合は、ルールも提供しています。2つのリストから両者の違いが考えられます!

 

 

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