2019年4月14日日曜日

一律同時の問題解決型算数授業はまぼろし!? 数学的予想を考える



私たち教師はだれもが、子ども1人ひとりが考えるペースに合わせて授業を大切にしたいと願っています。算数授業ではさかんに問題解決学習が求められていますが、そこでおこなわれている一斉授業では、「問題→計画→解決→話し合い→適用問題(問題解決型学習の流れの一例)」といったようにわかりやすく段階に応じてすすめられています。しかし、全員が同じ学習ペースで計画をする、解決するといったことがありえるのでしょうか。もしかして、それは算数授業のまぼろしかもしれません。

一般的な算数授業で問題を解くときには、その問題から「分かっていること(知っていること)」「求めること(知りたいこと)」を確認しますが、問題解決の見通しをもつための「計画」について出し合います。その際、見通しが立てられる子は、すでにその問題の解決方法が分かっている子ではないでしょうか。あとは計画に沿って、粛々と解決作業を進めるだけです。きっと、多くの子はその問題を解くために、どんな手立てや方法が使えるのか、「計画」そのものが思い浮かびません。そこを「教師からの優しさ」で全員が解決の見通しをもてるようにしてしまうことは、子どもがたくましく考え、問題解決する力を本当に育てているのでしょうか。

世の中にある問題の多くは、事前にすっきりと見通しをもって解決出来る問題はそうそうありません。そもそも、見通しを持てて解決の計画がすんなりたてられるのなら、すでに解決されてしまっています。大事なことは、解決を実行する技能面を育てるだけではなく、解き方が分からない際、その未知の問題に向かって、どういう計画で解いていこうとするのか、ひらめきを育てることです。

そのために、まずは小さく問題に取り組みはじめて、とけそうな自信やとけそうな感覚をもちながら、計画をつくりあげていく。それこそが、数学的に考えて解決していける問題解決の方法ではないでしょうか。そのためのヒントが『教科書では学べない数学的思考』にありました。


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そのひらめきを育てるよりよい方法は「予想」を言葉にすることでした。私たちは、日々、様々なことを問題解決して生活しています。しかしそこでは、一体どうやって解決しているのか、思考はしているのですが、そこでの思いつきや予想をメモしたりノートにその考えを書き記すことをしていないので、振り返って点検することができません。そこで「予想」を添え書きとして、「ウーン」や「アハ!」★とメモすることや、「もしかしたらこうとけそうなのかな?」とその思いつきをメモすることからはじめます。予想をみつけるためには、まず「知っていること」や「知りたいこと」★★に焦点を当てながら、小さく問題に向かっていきます。

実際に解けそうなところから、これまで解いたことのあるような「類似問題を見つけてみる」「扱う数字を小さくしてみたり」「図や表にまとめてみるといったこと」などを試してみます。そこには小さな自信やできない不安といった繊細な心持ちに向き合っていきます。問題解決していくことは、冷徹な論理的な道筋だけをおっていくものではないことがわかってくるはずです。

その小さく試すことから★★★、解けそうな予感、つまり「予想」が生まれ、直感を信じて、少しずつ霧が晴れるように問題解決の見通しが立ち上がってくるのです。その瞬時のひらめきを逃がさないように即座に次の3つを意識してメモしていきます。

①思いつく予想をメモする。
②その予想を実際に確かめて自信をもつ。
③その予想を疑ってみる。

最初から見通しをもって解決できることは、限られた場面の問題(つまり教科書問題!)にしか過ぎません。数学的思考を使って、創造的な問題解決するためにも、1人ひとりがその問題の核心に近づけるよう、予想を書き出していく、その予想を検証していくことをすすめる、そこから予想を使って解けたときの喜び!そんな授業をすることができたら、きっと、解けないときにも算数数学を楽しむ子どもたちが育っていくと思いませんか。

予想を書き出しながら少しずつ解法へ近づけていく数学的思考を育てる算数授業。現在、算数ワークショップ「数学者の時間」として、「作家の時間」「読書家の時間」に続いて小学校で研究されています。すてきな本になるよう、出版を目指しています。ぜひお待ちください。


ここに紹介する問題を使って、浮かんでくる予想をメモする練習をしてみてください。最初から見通しが立つ事なんてほとんどないとわかるよい例でしょう(『教科書では学べない数学的思考』の152ページ)。



★悩んでいるときには「ウーン」を、アイディアがひらめいたり、解けたりした瞬間などには「アハ!」をノートにメモ書きしていきます。

★★「知っていること」や「知りたいこと」も、問題解決が進むにつれて、予想とともによりよいものへと変化し、解決の見通しが立つようになります。

★★★ PLC便りバックナンバーを参考にしてください。
数学的思考はたった二つ。それは、試す「特殊化」と確かめる「一般化」
http://projectbetterschool.blogspot.com/2019/03/blog-post_10.html

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