年度末の人事異動により、この4月から小学校で週に2日半「少人数指導教員」をすることになりました。少人数指導といっても、実際には、学級担任の先生との算数のティームティーチング★です。担当している学年は、小学校1・2年生です。今回は、少人数指導教員として約1カ月の間に気づいたこと、感じたこと、考えたことについて紹介します。
■「勇気は伝染し、尊敬も伝染する」
これは、学級担任をしている青年とカウンセラーの哲人との対話を通して、アドラー心理学についてわかりやすく書かれた『幸せになる勇気』岸見一郎・古賀史健(著)[ダイヤモンド社]の一節です。
2年生のあるクラスの算数の授業で、「くりあがりのある足し算」の練習問題に子どもたちが取り組みました。いつもどおり、丸つけをしていたのですが、計算がちょっと苦手、というより正確には、学習ペースが他の子と比べるとゆっくりな女の子(Aさん)がいました。その子の横で問題の丸つけをしながら、「数字がていねいにしっかりと書いてあって、上手だね!」、「担任の先生が言ったとおりに、定規で線をきれいに引いていて、素晴らしいね!」などとプラスの言葉かけをしながら、つまずいている問題について、授業で学んだ計算の仕方を一緒に確認し、Aさんのペースで計算を進めました。すべての計算が終了した後、ノートに花丸を書きながら、「全部できました。やったね!これからも算数がんばりましょう!」と「期待」の言葉かけをしたのです。
その授業が終わって学級全体で挨拶をした後、Aさんが私のところに来て、小さな声で、でもしっかりとした口調で「K先生、一緒に考えてくれてありがとうございました」とお礼の言葉を述べて、深々とお辞儀をしたのです。私は、びっくりするとともにとっても温かい気持ちになりました。「こちらこそ、ありがとうございました」と、その子に答えながら「よし、これからも算数の授業がんばるぞ!」と、少人数指導教員としてのやる気に火がついていたのです。
放課後、学級担任のM先生にこのことを伝えました。すると、M先生からの反応は、「えっ!? Aさんですか!? Aさんは1年生の頃、緘黙だったのです。そうですか、Aさんが先生にお礼を言ったのですか。驚きですね。すごいですね。素晴らしいですね。成長していることがわかって、うれしいです。ありがとうございます!!」というものでした。
M先生は、学年主任をしていて、朝、職員室で会ったときに、いつも必ず「おはようございます。K先生、今日も算数の授業よろしくお願いします」と挨拶をしてくれます。2年生の、他の二人の学級担任の先生も同じように挨拶をしてくれます。
放課後になると、職員室にいる私に対して、「今日の算数、ありがとうございました。この次もお願いします」と、お礼の気持ちを言葉にして伝えてくれます。また、少し手を焼いている男の子の様子やその子へのはたらきかけについても話をしてくれます。多少疲れ気味な日も、話をしているM先生の表情は、明るく前向きなものです。まるで子どもたちとのかかわりを楽しんでいるようで、子どもたち一人一人に対する「敬意(好奇心・関心)」と教師としての温かい「愛情」が感じられます。
正に、学級担任・学年主任であるM先生の「ひとに対する敬意」が、学級の子どもたちや学年の先生たちにも伝染している・影響を与えているのです。そして、私に対しても。★★
■私自身が少人数指導教員として、算数のティームティーチングで心がけていること(今後、取り組もうと考えていることを含めて)は、次の3つです。
1.子どもたち一人一人の学習意欲・やる気を高める。
2.子どもたち一人一人の学習状況に対する学級担任の先生の理解を促進・支援する。
3.子どもたち一人一人が主体的に算数の学習に取り組めるような提案をする。
1については、子どもたちがノートに書いた学習課題に対する自分の考えについて、子どもたち自身に説明してもらったり、練習問題や復習プリントの丸つけをしたりするときに、「うん、うん、そうか!」、「とってもわかりやすいね!」、「納得!」、「すごいね!」、「素晴らしい!」、「やったね!」、「全問正解だよ!算数、得意でしょう!」、「おしい!あとちょっとでパーフェクト!」、「ここのところをどうしたらよいか、もう一度、前の授業でノートに書いたところを見て、考えてみるとわかるよ!」など、子どもたち一人一人に対してプラスのフィードバック・ストロークをしています。
2については、算数の学習が終わった後や放課後に、気づいたことやメモした内容を学級担任の先生に伝えるようにしています。
3については、今後、3月12日のPLC便りで紹介された『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ ~「違い」を力に変える学び方・教え方』[北大路書房]や『算数・数学はアートだ!』P.ロックハート(著),吉田新一郎(訳)[新評論]、『受動から能動へ』正木孝昌(著)[東洋館出版]などを参考にして、具体的な提案をしたいと考えています。
★ 本来のティームティーチングでは、授業・学習指導における複数の教師の「役割」は固定しない(同等の役割関係)ということが常識なのですが、私が所有している教員免許状は中学校と高等学校のもので、正式には小学校教員免許状をもっていないので、学級担任の先生がT1(メインの役割を果たす教師)、私がT2(サポートの役割を果たす教師)ということになっているのです。
★★ 『人を動かす2~デジタル時代の人間関係の原則』D.カーネギー協会(編),片山陽子(訳)[創元社]の中(p.12)にも、「これらの原則は、人を動かせるのは演出や操作ではなく、深い敬意や思いやりや好意を表すことのできる本物の習慣だけだと言っているのである」と書かれています。また、中原 淳(著)『フィードバック入門』[PHPビジネス新書]の第2章「部下育成を支える基礎理論 フィードバックの技術 基本編」でも、「フィードバックは、まずは相手の成長を願い、相手の意志をリスペクト(尊敬)する態度から始めましょう」とあります (p.107)。さらに、2月5日のPLC便りで紹介された『好奇心のパワー』[新評論]は、「ひとに対する敬意・好奇心」にあふれたコミュニケーションの実際について書かれた本です。
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