『Wireless Wire News』というブログに次のような記事がありました。
「プログラミング教育の落とし穴」2015.10.26
(筆者は清水 亮氏。同氏は、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げるなど天才プログラマーとして知られている)
「プログラミングの「何を」学ばせたいのか、そして子供たちにプログラミングを学ばせることで、どうしたいのか、という指導方針が各社まちまちで、「果たして高い月謝に見合うだけの価値があるのだろうか」と首を傾げるものが多いのです。
プログラミング教室で最も問題となるのは教材の質です。
小学生などを対象にしたプログラミング教室では、主にマサチューセッツ工科大学のミチェル・レズニック教授らが開発した子供用ビジュアルプログラミング言語Scratch(スクラッチ)を使った講座が数多く組まれています。
確かに、Scratchはプログラミング入門の第一の障壁であるキーボード操作に習熟しなくても手軽にプログラミングを体験できるため、入門には適しているのかもしれません。
しかし、Scratchの明らかな問題点は、Scratchを構成するそもそもの発想が古すぎるということです。
そもそもScratchは手続き型プログラミング言語、平たく言えばかつてのFORTRANや、BASICといった世界観に原始的なオブジェクト指向を組み合わせた世界観しか表現できません。 ~(中略)~
もっと大きな問題は、Scratchの延長上に普通のプログラミングがないことです。
たとえば、かつてBASICが隆盛を極めたことがありました。
大人も子供もBASICを学んだ時代です。
BASICでできることは、今日Scratchでできることとほぼ同じです。
しかし、BASICの場合、その延長上にプロとしての仕事がありました。
商業用ソフトがBASICで書かれたり、また、企業や工場の中で使うアプリケーションが
BASICで書かれたりということはよくあったのです。
ですから、BASICが書ければ飯が食える、という状態が一定期間ありました。
これは90年代の終わり頃まで続きます。
その後、プログラミング言語の主流はC言語に移り、C++言語に移り、Javaに移行してい
きました。
一貫していたのは、CだろうがC++だろうがJavaだろうが、延長上に仕事としてのプログ
ラミングがあったことです。
飯が食えるなら、勉強するのも悪くありません。
ところがScratchは、いくら勉強しても仕事になりません。せいぜい、Scratchを教える
教員になれるくらいです。」
これから新学習指導要領の対応に追われる小学校は間違いなく、教科書会社や教材会社の薦める「プログラミング教育のための教材」に飛びつくことでしょう。若手教員で、デジタル機器の取り扱いに長けている人が先導役に指名されると思います。おそらく、そのときの主流になりそうなものの一つが先ほどの「Scratch」というソフトウェアなのです。
天才プログラマーが「Scratch」は将来性のあまりない、閉ざされた世界のものですよと警告しているわけですから、これは要注意です。教育委員会でもこのことを理解している人はほとんどいないでしょうから、やってはみたものの役に立たないという可能性があります。
新・小学校学習指導要領では、算数科において「指導計画の作成と内容の取扱い」の中で、次のような例示があります。
「第1章総則の第3の1の(3)のイに掲げるプログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には,児童の負担に配慮しつつ,例えば第2の各学年の内容の〔第5学年〕の「B図形」の(1)における正多角形の作図を行う学習に関連し
て,正確な繰り返し作業を行う必要があり,更に一部を変えることでいろいろな正多角形を同様に考えることができる場面などで取り扱うこと。」
また、理科においても同様に次のような一文が例示されています。
「例えば第2の各学年の内容の〔第6学年〕の「A物質・エネルギー」の(4)における電気の性質や働きを利用した道具があることを捉える学習など,与えた条件に応じて動作していることを考察し,更に条件を変えることにより,動作が変化することについて考える場面で取り扱うものとする。」
ここで、大切なことは「はじめに内容ありき」ではなく、上記のような指導方法が求められるような指導計画や授業の進め方です。教科書の内容に即した、自由度のない、ただこなすだけの学習になっては教師にとっても児童にとっても面白いはずがありません。また、ただ活動していればよいというのであれば、それも時間の無駄です。
これまで○○教育が学校に持ち込まれる度に、だれが作ったのかわからないような冷めた食事を無理やり食べさせるようなことが繰り返されてきたと思います。その過ちを繰り返してほしくないと切に願うところです。
そのためにも学校現場の先生方には、自分のネットワークを最大限に広げて、お互いに情報の交換を積極的に進めることが大切だと思います。よいアイデア、プランはSNSなどを利用して、どんどん広げていくことです。上からの上意下達を吹き飛ばすような、子供たちに一番近いところにいる先生方ならではの風を吹かせてほしいと思います。
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