2012年11月11日日曜日

小中一貫教育を考える


ここ数年、小中一貫教育を施策として取り入れる自治体が全国的に増えています。

私の勤務する地区でも、今年から市内全校での本格実施となりました。

 

まだ一年経過していませんので、全体的な評価はできませんが、ここまでの感想を述べます。

 メリットは、小中学校教員が相互に訪問する機会が増えて、お互いにどのような教育をやっているのかが、以前よりはよく見えるようになったということです。これまでは、確かにすぐ傍にある異校種の学校にどんな教師がいるのか、どんな教育活動をしているのかはほとんど見えてきませんでした。そのあたりを自覚して、小中連携を意図的に取り入れてきた学校(地区)は素晴らしいと思います。

 また、小中の9年間を一体のものとしてカリキュラムを考えたり、「教育の質保証」を考えたりすることは大切なことです。


 この小中一貫教育では、不登校対策等もその目的に含まれることが多いのですが、そこはそんなに簡単な話ではないと思います。「中1ギャップ」とよく言いますが、小学校と中学校のシステムの違いや学習内容などがその要因に挙げられています。確かに、教科担任制や定期試験など、中学校に入学して初めて出会うものがいろいろあります。ただ、それらによって不登校が引き起こされているとするのは、一面的な感じがあります。


 ここ数年の経験では、次のような傾向が見られます。

小学校時代に欠席がちの生徒は、中学校に入学して、夏休み前まではその多くがなんとかこれを機会にがんばろうという気持ちで、ほとんど休まずに来ることがあります。

しかし、夏休みを過ぎると、休みがちになり、そのうちほとんど欠席する傾向があります。これは、一つにはやはり学力問題が深く関係していると思います。小学校時代に欠席がちの生徒は学力面でも他の生徒よりも到達度が低く、授業そのものが理解できないということが多く見られます。やはり、授業がわからないというのは、だれにとっても苦痛なことです。きっかけは、友人との人間関係のつまずきだったりすることがありますが、その本当の要因は「学力問題」ではないかと考えます。

そう考えると、不登校生徒を減らすためには、少なくとも小学校卒業までに習得すべき学習内容をできる限り「おおむね満足」のレベルに引き上げることが重要です。そうだとすれば、小中一貫教育も、そのあたりに人もお金もかけるような方策が一番効果的と言うことになります。中学校の教員がたまに小学校に出かけて行き、授業をやってもそれで「学力向上」という成果はあまり期待できないということです。

中学校教員が小学校の学力向上に協力するという理念には大賛成ですが、それをやるには今の中学校は忙しすぎます。いろいろな○○教育が様々なところから要請されて、それをこなしていくだけでも大変な労力です。それにプラスして、「部活動」です。この部活動が今のように教員のボランティアによって支えられているにも拘わらず、そのことが正当に評価されていない現状は、いかにも日本的なことです。

そのあたりの整理がなされるには、まだしばらく時間がかかるでしょう。

それまでは授業以外の様々なことはできるだけ取捨選択して、できるだけ授業に優先して職員が向かい合えるような体制作りを管理職がやる必要があります。


今回のテーマに関連するようなご意見・ご質問など、pro.workshop@gmail.comぜひお寄せください。

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