ある研究者が6つの大陸の29か国の136人の教師に、教員研修についてのインタビューをしました。教師たちが明らかにしてくれた、その体験内容は大きく異なるものでした。「一度も参加したことがない」から、「その内容が自分にとって関連性がないので失望した」や「参加した教員研修によって力を与えられ、意欲的に実践に取り組んでいる」まで多様でした。この多様な反応は、日本国内の教師を対象にインタビューしても、似たような結果が得られるのではないでしょうか?(一度も参加したことがない、という人は悉皆研修が多いのでいないでしょうが。)
彼女の調査結果が導き出した驚くべきことの一つは、これらの異なる経験にもかかわらず、意味のある教員研修を設計するために重要だと考える同じ一連の原則にたどり着いたのです。学校は、新しい派手なことをするのではなく、むしろ、教師のためにこれらの核となる普遍的原則が常に存在することを確保することに焦点を当てるべきだとしています。
以下に、その4つの原則を紹介します。
1教員研修を参加者に関連性のあるものにする。
インタビューを受けた教師たちにとって、効果的な教員研修は、まず日々の教室での経験に関連している必要があります。関連性のある研修は、教科に特化しており、エビデンスに基づいた最善の教え方★に根ざし、教師たちが直面する最も一般的な課題(たとえば、特別支援が必要な生徒のサポート、神経多様な生徒への配慮、教えることと学ぶことへのICTの効果的な統合★★など)に対処します。関連性のある教員研修はまた、実践的であり、教師が実施することが期待されるスキルをモデルで示し、実践と振り返りの機会を豊富に提供します。最も重要なのは、実用的で即座に適用可能な方法を提供し、教師の学びが直接的に教え方の向上(=生徒の学びの向上につながること)を保証するものであることです。
以上と同じことがすでに、https://projectbetterschool.blogspot.com/2015/11/blog-post_29.htmlの2つの表に表されています。
アメリカのワシントン州にある高校では、教師たちは最も関連性のある教員研修の例としてコーチングを挙げていました。これは、学校に常駐するコーチとペアで、4〜5週間教師たちが特定した最も差し迫った授業の課題に取り組むというものです。このような対象を絞ったアプローチにより、教師たちは直面している最も関連性が高く緊急の問題に対処し、自分の教え方を向上させることができます。
コーチングについては、来年出版予定の『インストラクショナル・コーチング』とThe Art of Coachingの邦訳を参照してください。
2教員研修を協働的にする
教師は同僚と共に学び、同僚から学びたいと考えており、教師が最も重視する教員研修は、教師同士の協力に基づいています(間違っても、講師などの話を聞くことではありません!)。チームベースの学び、教師が互いに観察し合い、ピア・コーチング、協力して授業/単元案の開発、教科の枠を超えた学びの機会などが、教師たちによって最も効果的な学びの方法として挙げられています。
教師にとって、協働的な教員研修は、専門的な学びを深め広げるだけでなく、学びが行われる支援的で安全なプロの教師集団=PLC(このブログのそもそももねらい!!)を生み出し、継続的な改善、体系化された実践、共通の言語を育む環境を促進します。教師が自らの専門知識を同僚と共有する教師主導の取り組みを奨励することで、豊かな教師相互の知識基盤を生み出し、学校全体のコレクティブ・エフィカシーが向上する可能性があります。 ~レクティブ・エフィカシー(集合的効力感)については、『コレクティブ・エフィカシー~自立的で相互依存的な学習者を育てる』ジョン・ハッティほか著、北大路書房を参照ください。
3教員研修を継続的にする
教師たちがインタビューで繰り返し述べたように、彼らは教育を専門的成長の生涯にわたる旅と見なしています。それに伴い、専門的な教師の学びはこの長期的な成長のために必要なサポートを提供しなければなりません。すでに分かっているように、イベントとして行われる教員研修では、教室での実践向上に不可欠な持続的な変化にはつながりません。したがって、効果的な教員研修は継続的である必要があり、教師たちが学び、アプローチや技術を実施し、振り返り/修正するための定期的な機会を提供することになります。~ ある意味では、このサイクルを回し続ける中長期間の時間(しかも、毎週ないし隔週というペースで)が欠かせないと言えます!
学校に常駐するインストラクショナル・コーチは、教師が新しく学んだことが適切に理解され、実施されることを助けます。インストラクショナル・コーチは、各教師に対して最善の教え方をモデルで示し、教室での実施を観察し、教師にフィードバックを提供して教室での実践を向上させます。この継続的なアプローチにより、教師が学んだことが教師の教え方に移行し、さらに定着することが保証され、時間とともに教師の教え方により意味のある変化がもたらされます。
4教師をエンパワーメントする
私たちがインタビューした多くの教師にとって、教員研修はしばしば彼らに対して行われるものであり、彼らと共に(ないし、彼ら主導で)行われるものではありません。教育委員会や教育センターの研修担当が、いくらがんばって、受講者のニーズを把握しようとして、テーマを掲げて、適当な講師を呼んできて、その話を聞かせたところで、残念ながら、それが受講者に伝わること(ましてや、残って活かされること)はほとんどありません。その意味で、この無駄なアプローチは早々に改めるべきです!
教育委員会や教育センターは、教師による教師のための一日がかりの教師が学び合うためのフォーラムを組織することができます。例えば、カナダのニューブランズウィック州では、すべてのセッションが教師によって設計され、教師のために実施される人気のある年次一日フォーラムを開催しています。教師に自分たちの研修の設計に関与してもらうことと、教師の専門性を認め活用することになります。また、教師が参加する教員研修の種類についてより多くの選択肢を提供することは、教師の「オウナーシップやエイジェンシー(自分事や主体性の意識)」を高めます。また、教員研修のプロセスにおいて教師が大切にされ、「声や意見」が聞かれていると感じることは、学びのプロセスへのより積極的な取り組みとコミットメントを確保します。これらの要素~エンパワーメント、参加者の声や選択、オウナーシップやエイジェンシー、積極的な取り組みやコミットメント~を総合的に取り入れることで、世界中の教師に響く強力な教員研修の枠組みが形成されています。
逆に言えば、これらの大切な要素がまったく考えられていない日本の教員研修のほとんどが、見事に「実にならない」研修であり続けている理由も明らかになります!
★日本で一般的な教え方は残念ながら、単に習慣だからという理由だけで、このエビデンス(証拠)がないものがあまりにも多すぎます。
★★この最後の点に関しては、先月に新刊の『一人一台で授業をパワーアップ! 教育の質を飛躍的に向上させるICT活用実践ガイド』(ダイアナ・ニービー&ジェン・ロバーツ著、学文社)https://projectbetterschool.blogspot.com/2024/10/ict.html
出典:https://ascd.org/blogs/4-universal-principles-for-effective-teacher-pd