「先生、ありがとう。おかげでアプリをインストールできた。でもスマホを使う時間については、今夜また話し合って決めるんだ」と、 クラスの子が嬉しそうに話してくれました。子どもたちが高学年になると、スマホの問題は避けて通れません。学年が上がるごとに、スマホやSNSに起因する問題、さらにはゲーム依存症が増加します。
この生徒も、親が定めた厳格なルールに耐え切れず、密かに友人からスマホを借りてゲームをしているという情報を、親からの相談で知りました。デジタル世界で子どもたちが安全に活動するためには、インターネットの基本的な使い方、プライバシー保護、情報の信頼性の評価など、デジタルリテラシーは欠かせません。
私たちは、子どもたちが自分自身でルールを守るために、大人としてどのように関与できるのか考えなければなりません。その際に重要となるのは、ルールは子ども自身が作ることです。その理由は、自分自身で作ったルールにのみ、子どもたちは主体的に参加し、それを守ろうとするからです。
この視点を踏まえて、親たちにも協力をお願いし、先日の保護者懇談会でスマホやデバイス、SNSの使い方について話し合う機会を設けました。そこでは、「子どもファースト」を原則に、子ども自身が「自分で決めたことを自分で守る」ことの重要性を強調し、ルール作りのガイドラインを参考に話し合いました。
最初が肝心! スマホを与える際には必ずルールを
ルール決めの7カ条。
① 話し合いは子供ファースト。
親の意見の前にまず子供の意見を聞く一方的に命令されたことに従う素直に従う子供はいません。親としては受け入れがたい内容でも、まずは子供の希望、子供の気持ちを聞く。
② 子どもの意見を聞いた上で、親の考えを説明する
親が心配するのは、生活リズムが乱れる、勉強しなくなる、犯罪に巻き込まれる可能性が多いです。そうならないようにするには、どうすれば良いのかを親子で考えます。時間制限を設けるのか、それはいつまで続くのか、あくまでも話し合いで決めていくことが大切です。
③ ルールを守らなかった場合のペナルティーを決める
話し合って決めたルールも、ほとんどの場合は破られます。その時にどうするのかペナルティーも決めておきます。まず。これもまず、子供にペナルティーを提案させ、親はそれに意見を言う形で進めます。
④ 様々なケースを想定しておく
ペナルティーを実行すると、子供が切れる場合があります。切れたらどうするかまでを話し合っておく。ざっくり決めたルールは抜け穴だらけです。
⑤ ルールやペナルティーが変更できる付帯条項をつけておく
話し合って、ルールを決めても厳しすぎて守れないなどうまくいかないこともあります。親も子どもも不服申し立てができる、見直しができる条項をルールに加えておきましょう。
⑥ どちらかが感情的になったらストップ
日を改めて話し合う。ルール決めは話し合いの練習の場です。喧嘩や口論では、お互いが納得できるルールに到達できません。感情が高ぶって冷静さを保てなくなったら日を改めます。
⑦ 話し合いのプロセスを動画に撮っておく
動画は、子供にルールを守らせるお持ちになりますが、親が自分の発言を都合よくごまかさないためのものでもあります。撮った動画は親だけでなく、コピーして子供にも持っていってもらいます。★
石田勝紀『子どものスマ歩問題はルール決めて解決します』(主婦の友社)2022参照
我が家のルール(例)
使用時間の制限
・ メール、ゲーム、動画、全て合わせて1日2時間まで
・ ゲームは夜9時以降はやらない
・ 平日2時間、休日3時間。どちらも夜10時まで
親が様子を把握できる
・ 使うのはリビングで。自室に持ち込まない。
・ アプリのインストールは許可制
・ スマホ画面にロックをかけない
SNS対策
・ SNSに写真をアップしない
・ 連絡先を交換する際は、親に報告する
石田勝紀『子どものスマ歩問題はルール決めて解決します』(主婦の友社)2022参照
懇談会では、「一方的に対応する親の会話例」と「子どもを中心に考え、共に問題解決を目指す親の会話例」を実際にロールプレイで演じる場を設け、体感的な理解を促しました。あえて過剰に一方的な親の会話例を演じた結果、笑いが起こりつつも、ルール作りが各家庭で慎重に考えるべき課題であるという理解が深まったようです。この体験は、大きなトラブルが発生する前に、親子が互いの立場を尊重しながら意見を交換する貴重な機会となりました。ルールは一方的きめることではうまくいきません。
スマホのルール作りを通じて、家庭でも民主的な対話の練習を取り入れることを推奨します。これにより、子どもたちは自分自身の責任で学び、また新たな困難な状況に立ち向かうことの重要性を理解するでしょう。
★クラス実践で上手くいったのは、動画よりも紙に書いて貼っておくことでした。石川結貴『スマホ危機 親子の克服術』(文春新書)2021に取り組み例が詳しく紹介されています。
紙のチェックシートで意見交換を!
スマホを契約する際、多くの人が料金プランの検討をしますが、親子間でそれぞれの考えを共有し合っているでしょうか?私たちは、アナログな方法、具体的には紙に書き出す形での意見交換を推奨します。
まず、子ども自身に「スマホが欲しい理由」を書き出してもらいましょう。その理由として、「LINEで友人とコミュニケーションを取りたい」「暇なときにオンラインゲームを楽しみたい」「学習用アプリを活用したい」などがあるでしょう。
次に、親は「スマホ使用に対する懸念点」を記入します。たとえば、「ゲームに熱中して勉強をおろそかにするのではないか」「SNSを通じて危険な人と関わるのではないか」「LINEでの排除やいじめがあるのではないか」など、思いつくままに書き出すとよいでしょう。このプロセスを通じて、子どもはスマホの利点だけでなく欠点も認識し、親も同様にデメリットを確認することが可能になります。このようなメリット・デメリットのリストアップは、紙に書き出すことでより明確に見える化することができます。
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