プレイブックは、まだまだ日本では馴染みのない言葉です。2021年、東京オリンピックの選手村で使用するプレイブックが作成されたことで、その存在が知られるようになってきました。ビジネスの世界では少しづつ認識されるようになっているようです。
マニュアルやルールブックなど、似たようなものが存在するため、なかなかピタリと定義されたものを見つけるのは難しいのですが、以下の説明が分かりやすいのではないでしょうか。
「マニュアルでもなくルールブックでもなく、プレーブック。こうしたらうまくできるよ≒マニュアルやこうすることがルールだよ≒ルールブック という教えではなく、勝つためにはこうしなさい という、ゲームに勝つための方法を記したもの、それがプレーブックです。<中略>ルールブックが六法全書とすれば、プレーブックは判例集のようなものでしょうか。マニュアルがゲームに参加する初心者向けのモノであるとすれば、プレーブックはプロ向けの実戦テクニック集のようなものかもしれません。」★1
教育コーチングの研究者であり実践家のジム・ナイト氏は、著書の中で、学校版「プレイブック」が、教員の成長をサポートするリーダーに不可欠なツールであると主張しています。教員の実践に役に立つ強力なテクニック集としてのプレイブックです。★2
プレイブックは、いわゆる広く書店で販売される書籍ではありません。学校現場に関わる人たちが関わって、協働で創るのです。ナイト氏は、プレイブック開発チームをつくって、そこで作成することを提案しています。そこには、教育コーチはもちろん、教育行政、教員、生徒などさまざまな人が関わることが推奨されています。
学校版プレイブックは、目次、ワン・ペイジャー、チェックリストで構成されています。「目次」は文字通りプレイブックに含まれる実践テクニックのリストです。それらを、計画、評価、効果的な指導方法、コミュニティーづくりの4つのカテゴリーに分けることが多いようです。「ワン・ペイジャー」は、その名称が示すとおり、紹介されている実践テクニックを1ページに要約したものです。最後の「チェックリスト」は、効果的に実施されたかどうかをチェックするためのものです。
さらに、プレイブックは作成するだけはないという点が重要です。作成され、実践に使用されたプレイブックは、評価し、検証されるべきであるとしています。検証の方法は「実践後の振り返り」と呼ばれています。これは、米陸軍が開発した AAR(After Action Review)をもとにしたもののようで、1 何が起こるべきだったのか 2 実際には何か起こったか 3 1,2の違いのを生んだのはなぜか 4 改善のために次にすべきことは何か の4ステップで行います。
驚くのは、学校版プレイブックは「生きた文書(a living document)」なので、年に2−4回は検証の会議をもつべきであるとまで述べている点です。ものすごい頻度です。毎年、全国で数多くの実践報告集が作成されていると思いますが、それらの多くは、開かれず、本棚に積まれているだけではないでしょうか。まして、検証され、見直されることは少ないはずです。
教育実践に関わる人々の経験と叡智を集めたプレイブック。しかも、検証と更新が止むことなく続けられる。プレイブックの作成と更新そのものが、教師の学びと成長を生むプロセスになっていると言えそうです。
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★2 出典をお知りになりたい方は、pro.workshop@gmail.comに連絡ください。
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