2020年8月2日日曜日

専門職としての教師の復権

在宅勤務をするようになって4ヶ月が過ぎた。私にとっては、実に快適な4ヶ月間であった。まず、通勤に必要な往復二時間弱のロスがなくなった(公共交通機関が脆弱な地方都市では運転せざるを得ない)。(あまり意味のない)会議もオンラインになった。多くの会議はその場にいなくても良いことが明らかになった。授業もオンラインに慣れてくると快適だった。教室に同時にいなくても達成できることがたくさんあることに気づいた。出張もゼロ。様々な場所や人を訪ね、出会いがあるのは楽しいが、その分多くの時間を費やす。(ただ一つ、まだオンライン飲み会だけは試していない。どうも味気ないような気がして踏み切れない。)自分の時間を自由に使えるというのは、なんという贅沢なことなのだろうかと実感したものだ。

ただし、小人閑居して不善をなすのとおり。終日、高い緊張感をもって仕事をやり続けているわけではない。ちょっぴりソファに横になってみたり、仕事とは関係のないサイトを読み耽ったりする。襟付きのシャツを来ていても、下半身は半ズボンなんてこともあった。

そうであっても、やはり自分の裁量で、その日のゴールを決め、その日取り組むことを決め、自分の裁量でスタート時間も終了時間も決められる。集中して短時間で終える日もあれば、延々と一つのことをやる続ける日もある。しかし、自分でコントロールできるのは、実にありがたいと感じた。

労働生産性という点では、私の場合はかなり高くなったと感じた。

そのメリットを最大限生かしていきたいと、コロナウイルス後は在宅勤務を標準化しようとしている日立や富士通のような企業もある。しかし、まだまだ一部に止まっている。日本では在宅勤務が定着しにくい労働風土があるようだ。

日本経済新聞によると、場所にとらわれない働き方を重視する企業の割合は、英国の53%や米国51.7%などを下回り、日本は47.2%らしい。主要国で最低水準とのことだ。また、1時間あたりの生産労働性は、米欧比で日本が40%低いことが紹介されている。また、欧米並みに在宅勤務が定着しにくい理由の一つとして職種の問題を挙げている。ある調査によると、就業者に占める専門職(技師など准専門職含む)の比率は日本は17%。米国の36%や英国の37%の約半分。専門職はIT技術者や法務や財務など知識集約型の職業も多くオンライン化が比較的容易で、在宅勤務に適するとして、「在宅勤務をしやすい環境を整えることが国際競争力を高めるためにも不可欠だ。」と述べている。★

専門職の代表格とも言って良い教員の場合はどうだろうか。今回、コロナウイルスによる一斉休校になったおり、多くの自治体で在宅勤務を緊急に導入したようだ。

ただ、在宅勤務を運用する段階になって、学校によって温度差があったらしい(あくまで個人的交友の範囲であり、広く調べた訳ではありません)。一つのタイプは、教員の服務を厳しく管理しようとした学校。在宅勤務の場合は、詳細な業務報告を提出すべしと。提出したくなければ、年次休暇をとるべしとの管理職のささやきがあったらしい。もう一つのタイプは、教員への信頼と裁量に委ねた学校。「業務報告は教材研究と書いておけばよろしい。学校再開後に向けてしっかりと研究を。」といった方針だったようだ。

私の知り合いは、管理職のささやきに負けて結構年次休暇をとったらしい。専門職としてのプライドはないのか!と叫びたい気持ちだったが。

ここ数年、教員の働き方改革が大きなテーマの一つであった。それが、感染症の蔓延という思いもよらない事態に直面して、従来の考え方を見直さざるを得なくなったことが多くでてきた。多くの教員を職場にくくりつけ、学校は多忙化していたが、さほど教員が手をかけずとも、物事が進んでいくことも明らかになってきた。

勤務時間の長さで、教員の業務が計られることで良いのか、もう一度、この機会に問い直したい。裁量労働であろうが、在宅勤務であろうが、価値を生むことができるのが、教員という仕事だと思うのだが。皆さんはどう思われますか。

この機会に、今、学校を覆っている価値観を、問題意識をもって問い直すことから初めてみませんか?今、やっていることは本当に子どもたちファーストになっていますか?今、やっている研修や校内研修は、本当に教員としての必要な学びになっていますか?これまでやってきたからという理由だけで、同じことを繰り返していませんか?★★

★「在宅勤務定着、ニッポンの壁 主要国で最低水準 チャートは語る」日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO61173150U0A700C2MM8000?disablepcview

★★ジョージ・クロス(2019)『教育のプロがすすめるイノベーション』新評論(白鳥信義、吉田新一郎訳)や、『教師の仕事をハックする(仮題)』(今秋に出版予定)を読んでみてはどうでしょうか。


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