2週間前のPLC便りhttp://projectbetterschool.blogspot.jp/2016/12/blog-post.htmlでは、中学校の教科担任の要請に基づいて、地域教育コーディネーターの人たちがコーディネーションした地域の教育資源・人材を生かした「わくわく理科(特別授業)」の成果と問題点について、紹介しました。
問題点を解決・克服するために、私が勤務した中学校では、平成24年度から、地域の多くの人材と連携・協同し、子どもたちの「問い」を大切にしながら、1年間をかけて探究的に学習を進めていく環境学習を実施しています。
以下は、理科と総合的な学習の時間を使って実施している環境学習の流れ・プロセスです。
■事前準備・企画
年度末~4月初めに、理科の教科部会で環境学習の年間計画(カリキュラム)を検討・作成します。その後、年間計画(案)を基にして、講師の方々と打ち合わせを行い、子どもたちの探究学習を推進するためにはどうしたらよいか、知恵を出し合い、環境学習のカリキュラムを改善・修正します。
■事前学習
【ガイダンス1】
前年度までの環境学習の写真や動画、「報告新聞(レポート)」を用いて、フィールドワークへの動機付けを行い、子どもたちは1年間に及ぶ環境学習全体の見通しをもちます。[1時間]
【ガイダンス2】
環境学習を行うフィールド・里山に関して、市の職員から市の里山保全に関する様々な取り組みについて学びます。特に、生物多様性回復のための取り組み、コウノトリの野生復帰に向けた取り組みについて深く学びます。[1時間]
【テーマ別学習】
生徒一人一人が、自分自身の興味・関心に応じて、「野鳥」「昆虫・水辺の小動物」「植物」の3つのテーマの中から、一つを選択します。選択したテーマごとに分かれ、各テーマについて造詣の深い複数の講師から、里山の自然環境について、さらに動植物の具体緒的な観察・調査方法と留意点などについて学びます。[2時間]
■プレ・フィールドワーク
【目的】
1.「個人テーマ(生徒一人一人が、約1年をかけて探究する課題・問い)」を設定する。
2.「個人テーマ」を解決するために、「何について・どんなこと(観察・調査の内容)」を、「どのように(観察・調査方法)」して観察・調査すればよいのかを明確にする。
3.里山の自然に接し、動植物を見る・触れる・においを嗅ぐといった観察体験を通して、フィールドワークへの興味・関心を高める。
4.フィールドワークの実際について、具体的なイメージと見通しをもつ。
【実施方法】
生徒は、25名ほどの3つのグループに分かれ、フィールド・里山を巡りながら、生息している動植物の特徴や生態、それぞれの関係性について、講師から解説をしていただく。生徒は、グループごとに講師からの解説を聞きながら、観察と記録を行います。[1時間]これを「野鳥」→「昆虫・水辺の小動物」→「植物」と、テーマごとにローテーションして3回行うのです。[合計3時間]
【ふりかえり】
プレ・フィールドワーク終了後に「ふりかえり」を行い、講師や理科の教科担任のアドバイスも得ながら「個人テーマ(探究課題)」の設定と「観察調査の内容」及び「観察・調査方法」の確認を行います。[1時間]
■フィールドワーク(本調査)
「個人テーマ(探究課題)」を解決するために、春、夏、秋、冬の季節ごと、講師と共にフィールドワーク(観察・調査)を行います。[2.5時間]
【ふりかえり】
各季節のフィールドワーク終了後にも、毎回「ふりかえり」を行います。そこでは、講師や教科担任からのアドバイスを参考にしながら、「個人テーマ(探究課題)」の解決に向けて、「明らかになったこと」や「わからないこと」「新たな疑問」の確認、「観察・調査計画の修正」などを行います。[1時間]※もちろん、「大切な友だち」のやり方でhttp://projectbetterschool.blogspot.jp/2012/08/blog-post_19.html。
■報告新聞(レポート)の作成
春、夏、秋、冬の季節ごとのフィールドワークについて、生徒一人一人が、上記の「ふりかえり」を通して得られたことと写真記録などを中心に、それぞれ新聞形式のレポートとしてまとめます。[1時間+家庭学習]×4回
■環境学習報告会
生徒一人一人が作成した「報告新聞」に基づいて、1年間に及ぶ環境学習全体の報告会を行います。ポスターセッション方式、「野鳥」「昆虫・水辺の小動物」「植物」の3つのテーマをミックスした6人程度の小グループによるジグソー方式など、試行錯誤しながら「学んだこと・発見したことの共有化」を行っています。[2時間]
このように、時間と手間をかけ、中学校の教員が地域の人材と連携・協同して「学びの原則」に則ったカリキュラムを開発すれば、学区にある里山という地域の資源・自然環境を活用し、子どもたちの「問い」を大切にした「探究学習」を実現することができるのです。
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