先月下旬、私はアメリカ・コロラド州デンバーでNSTAという理科教師の団体のカンファレンスに、参加してきました。全米のみならず、世界中から参加者が集まってきましたが、当日の暑さもさることながら、参加者の熱気もそれを上回るものでした。
今回のテーマは「STEM」(Science Technology Engineering Mathematics)でしたので、科学技術につながっていくような「ものづくり」のイメージが強いように思いました。身近にある素材を利用して、橋の強度を教えるような教材や顕微鏡を使用しての観察に適した教材の提示などがあり、その場で気にいったものは購入できるようになっていました。日本と異なり、教材開発なども地元の企業がスポンサーになって、共同開発したものが結構ありました。
また、このNSTAという団体は本も出版していますので、当日の会場でもおすすめ本を販売していました。その中の1冊を紹介したいと思います。
『Differentiated Instructional Strategies for Science,Grade K-8』Gayle H.Gregory他,Corwin Pressです。Differentiated Instructional Strategiesは、「子供一人ひとりをいかす」指導法です。この本の序章にも書いてあるように、このやり方を使えば、「アクティブで意味のある学びを通して、子供の関心や意欲を高めることができる」のです。
1,2章には「一人ひとりをいかす」指導法のためのプランニングガイドが書かれています。
『効果10倍の教える技術』(吉田新一郎)にも紹介されていたコルブの「学びのモデル」やマカーシーの4MATシステムなども解説されています。このあたりのことは世界の常識なのですね。(日本人の教師だけが知らないようです)
面白いと思ったのは、子供の実態を知って、その子に合った学び方を用意するために、ある単元に入る前に「理科学習にかんするアンケート調査」のサンプルが紹介されていたことです。少し手直しすればどのクラスでも使えるのではないでしょうか。
この調査でそれぞれの子どもの興味・関心を把握して、それに応じた教材、指導方略を用意することができます。教室の一角を○○コーナーとして、その内容に関心のある子どもはそこで自分の計画にしたがって学習することができるわけです。
「学びの原則」については、たびたびこのブログで紹介されていますが、その原則の一つに「選択できる」という項目があります。クラス全員が同じ教材を学習するのではなく、子供自身が課題を選べるというのがいいことです。これなら「やる気」が出ます。
そのような仕掛けが教室の中にいくつもある。これが「一人ひとりの子供をいかす」教室です。それこそが、「アクティブ・ラーニング」だと思います。
今あちこちで語られている「アクティブ・ラーニング」はそのごく一部だけを取り上げて、「これがアクティブ・ラーニングです」と言っている例が多いようです。
「理科に関する興味・関心調査」を最後に紹介しておきます。
『Differentiated Instructional Strategies for Science,Grade K-8』Gayle H.Gregory他,Corwin Press,p.44より
理科に関する興味・関心調査
氏名 日付
1. 理科という科目に対する興味・関心(○をつけて)
低い まあまあ 高い
2. 理科で一番好きなことは
理科であまり好きでないことは
3. 理科の分野で好きな領域は? (○をつけて)
生命科学 地球/宇宙科学 物理科学
4. 好きな学び方はどれ? (□にチェックを入れて)
□ 本や論文を読むこと
□ ゲームやパズル
□ 問題解決
□ パターンを探すこと
□ ロールプレイング
□ 実験
□ 対象物やできごとのデータを集めること
□ ビデオやスライドショーやパワーポイントのプレゼンを見ること
□ 体を動かす活動
□ 戸外や地域を調査すること
□ 自然を探検すること
□ モデルをつくるようなプロジェクト
□ 動物の世話をしたり、調べること
□ 友だちと一緒に活動すること
□ 一人で活動すること
□ 拡大器や顕微鏡を利用すること
□ その他
理科の中で一番学びたいことは
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