2025年3月23日日曜日

「学ぶ職員室」を目指して

 教師の教育観は様々で、専門性も力を入れていることも様々である。だからこそ、自分の考え方や感じ方を「普通」と捉えずに、それぞれの先生方がどんなことを考え、どのように指導にあたっているのか。それぞれの個性を知ったり、教育観を知ったりすることは非常に大切だと考えている。そのために私が普段から心がけていることがある。

① 職員室の先生方観察

  先生方の表情や仕事ぶりを観察していると、様々なことを知ったり考えたりすることができる。

  時に、耳をダンボにして、先生方の会話の内容がどんなものか聴きながら、コミュニケーションのきっかけにしたり、話す中身を決めたりすることができる。何気ない会話がお互いの自己開示につながり、その人となりや関係づくりにつながる。

  時に、普段と少し表情が暗い、口数が少ない先生がいたときは積極的にコミュニケーションを図り、少しでも力になれることはないか、信頼関係構築の一歩となるように努める。

そんな日頃の何気ない観察の積み重ねがいつしか、「とりあえず話してみよう」「あの人にお願いしてみよう」といった拠り所となり、校内の情報収集を図れる存在となることを目指している。 

 ② 校内散歩

  6年生に「お散歩が仕事」と言われるくらい、校内を毎日周る。もちろん、ただ周るだけでなく、いくつか観点をもって周っている。一つは児童理解。子どもの顔と名前、学級での様子を見るには現場にいかなければ分からない。もう一つは先生方の困り感を理解すること。先生方が日々学級指導、教科指導を行う中で、どんなことに力を入れ、悩んでいるのか。きちんと理解しなければ、先生方との真のコミュニケーションは図れない。考えたことや手に入れることができた情報は放課後に先生方との会話の種にする。一緒に課題を考えていく立場であると理解してもらえるように動いている。

 ③ 自分の実践や考え、学びの発信

  自己開示ほど大切なことはない。自分が何を考え、どんな実践をし、どんなものを得たり、課題としたりしているのか。そういったことを自己開示することが、相手の自己開示にもつながり、お互いの理解・信頼関係の構築につながると考える。何気ない会話の種となることで、思いがけぬ共通点や、知らなかった一面の理解等につながる。

 

  そんな普段の何気ない積み重ねが少しずつ実ってきたなと感じた瞬間があった。来年度の学校体制について少し考えたいことがあった。私が担当に直接話して投げたり、何も言わずに自分の中にとどめておいたりするという手段が思い浮かんだ。

  しかし、ある日、何気なくコーヒーを入れようと給湯室に行くと、ある先生から、「先生は来年度の校内研究体制についてどう思いますか?」という会話を振られた。

私は普段その先生と児童とのやりとりであったことや家庭の話など、そこまで真面目な話はしてこなかったので、その話をふられたのには驚いた。

「このままでは、どんな姿の子どもたちを目指すのかが分からない」「研究授業者だけががんばる研究は避けたい。全員が主体的に自分事になる研究を目指したい」「一人ひとりが課題や手立てを決めて、お互いにフィードバックし合うような研究がおもしろそうだよね」と、二人のやり取りが続いた。

話せば話すほど、研究の方向性で目指したい姿が同じであると感じた。ここまで深い話ができたのは、今まで他愛もない話ではあるが、様々なコミュニケーションを取ってきたからかと感じた。

「実は、他にも同じような考えをもっている先生がいそうなんだよね。先生もそう思うなら私がんばってその先生に話してみる。」

結果的に、様々な先生から、いつもであれば前年度踏襲が多かった来年度の話に、たくさんの意見が出る会議となった。日々のコミュニケーションによる関係づくりを進めたことで、何気ない会話から会議を動かすようなムーブメントを起こすことができた瞬間だった。

  職員同士の関係づくり。答えのないこの関係づくりこそが、教職員の方向性を同じベクトルへと向けていく上で、実は一番大切なポイントなのではないか。本当に目の前の子どもたちのためになることは何か。そのために私たちがまず一番にやるべきことは何か。それを一人ひとりが自分事として捉え、進めるために真剣に考え、議論していくこと。それが今、一番学校の教職員組織に求められている姿なのではないかと感じる。

  そんな「学ぶ職員室」の実現に向けて、日々少しずつ取り組むべき関係づくり。その関係づくりがもたらす、ムーブメントを起こす力を垣間見ることができた今、私はより一層日々の実践を積み重ね、より良い学びの集団を根付かせることができるように努めていく。

以上は、自分の学校での初任者研修を中心に、学び続ける教師集団をつくり出そうと過去3年間努力している教務主任/初任者校内指導教諭の田所昂先生(埼玉県)の実践記録です。

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