2025年3月16日日曜日

本当の学びとは?

  初任者は校内で公開授業や研究授業を年間数本実施しなければならない。指導案を考え、その内容で指導を受け、授業までに様々な手立てについて自問自答する。そして、授業後は研究協議会や参観していただいた先生方から指導を受け、その後の授業に活かす。これが、今まで取り組まれてきた初任研の研究・公開授業の形である。

 そんな指導の中で、私には気になる点がいくつかある。

 一つ目は授業前の指導だ。経験がたくさんある先生方にとって指導案に対する指導はとてもしやすい。もちろん基本的なことや、大きく内容が逸れていたり、指導方法に問題があったりする場合は指導する必要がある。しかし、経験を押し付け、やる前から指導を否定したり、「この方がいい」と別の指導法を提案したりすることが多々ある。果たしてそれは本当に初任者のためになるのだろうか。

 二つ目は授業後の指導だ。授業した初任者が、一方的に先輩である先生方から指導を受ける。「これがよかった」、「これはこうした方がいい」、「私だったらここはこうする」、そんな話を受けながらメモを取る姿は、毎回見られる光景だ。しかし、そこから本当に初任者は次の授業や指導に活かせる学びを得ることはできるのだろうか。一番厄介なのは先輩の先生によって言うことが違っている場合だ。一体何から変えていけばいいのか。いらぬ悩みは増え、自分の色を出した指導など程遠く、指導改善にもつながらないケースも見られる。

 私は校内指導教諭という立場になり、初任者の授業を見て、指導を行う際に心がけていることがある。それは、『初任者の考えを整理し、次の授業では何をしたいか自己決定させる』ことだ。

 先日、本校の初任者が最後の校内の研究授業を行った。特別の教科道徳の研究授業であったが、様々な立場の先輩の先生方に事前に色々な指導を受けていた。それぞれに指導観が出やすい道徳において事前指導を受けていることに若干危機感はもったものの、授業本番の時間を迎えた。

 実際に授業を見てみると、初任者の迷いは感じられず、とてもいい雰囲気のなか授業を行っていた。事後指導の際、まずは初任者に感想を求めると「様々な先生方からお話いただきましたが、自クラスの実態を見たときに、私は今回○○について取り組みたいと考えたので、○○を主発問にしたいと考えました。…自分なりに考えて、実際に取り組んでみたので、とっても楽しかったです。」

 その後、うまくできなかった点や、他の先生方から指導いただいた中で疑問におもった点を出してもらいながら「それはどうして(児童が)その反応になったと思う?」「今、言ったような反応にするためにはどんな手立てが考えられる?」「今話した中で、次に授業で活かしたい手立てはどんな手立て?」と問いを立てて、初任者自身の思考を整理しながら、次への課題となる手立てを自己決定させて、次への授業へとつなげられるようにした。

 このようなやりとりを年間続けたことで、上に挙げたような初任者が自分なりの考えのもとに授業を構成する力をもつといった成長につながったのではないかと私は考える。

子どもが自ら何が課題かを自分で見つけ、様々な手立ての中から選択し、試行錯誤しながら時に協働してよりよい納得解を考え、そして新たな課題を見出して、次の学びへとつなげていけるような力が求められている。そのためには、教師自身がその学びを体験しながら、子どもとの向き合い方を考えていく必要があるのではないか。そんなことを考えながら、初任者と日々向き合い、自分自身もよりよい若手教諭の育成、学ぶ職員室づくりを目指して、日々試行錯誤していこうと思う。

以上は、自分の学校での初任者研修を中心に、学び続ける教師集団をつくり出そうと過去3年間努力している教務主任/初任者校内指導教諭の田所昂先生(埼玉県)の実践記録です。

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