校内研修で、大切にしている教育活動について振り返り、教育理念を考える時間を設けました。自分の教育実践で大事にしている土台を再確認することは、慌ただしく日々を過ごしていく中でも、安定して邁進できることだと実感できました。また、校内研修でやることで、お互いの価値を可視化できることとなり、職場づくりにも役立つこととなります。
教育理念づくりはワークシートを使って日頃の活動を書き出すことから始め、大事にしている方針を言葉にし、それらをまとめて自分自身の教育理念を明らかにしました。この手順をペア活動で行いました。聞き役がいてくれることが、これまで抽象的なビジョンの言語化の手助けとなりました。
私たち教師は、日々の教育活動に迫られ、自分自身の実践の価値付けや言語化をついないがしろにしてしまいがちではないでしょうか。そこで、ティーチング・ポートフォリオ(以下TP)という「自らの教育活動について振り返り、その記述を根拠資料(エビデンス)によって裏付けた厳選された記録★」に向けて、それをワークシートで小中高先生向けに可視化したTP チャートをつくりました。
TPチャートは、東京大学の栗田佳代子さんらが提唱しているものです★★。「理念」「方針」「方法」といった構造化された一貫性をもったワークシートに記入することで、よりよい教育に向けて自分の教育活動について俯瞰的に振り返り、可視化し、軸としての理念を見出します。方針方法を対応づけ、将来の目標を設定するワークシートです。それは、教育業績の根拠となる資料ともなり、初等中等教育においても教育理念や目的を再確認し共有するツールとして浸透しつつあります。
公立学校では20年ほど前から続けている各市町村教育委員会が人事管理するための残念な形式的「自己評価シート」がありますが、TPはそれとは大きく異なり、教師自身にとっての成長を促す自己を見つめ直すオーナーシップをもったポートフォリオとなるものです。
ブログ Kyoko Kurita Lab 2019/8/14 より https://kayokokurita.info/post-752.html
今回、TPチャートは、ワークシートのそれぞれの項目に沿って、パソコンを使ってフセンにそれぞれ1項目ずつ記述し進めていきました。
- 自分の校務分掌や担っている仕事を「責任」項目に、それぞれ記述する。
- 教育活動における改善したいこと「改善・努力」に、教育活動から得られた成果を「成果・評価」に記述する。
- いつも行っている、自分が大事にしている「活動」を書き出し、なぜそれを実践しているのかその「方針」を明らかにし、それぞれ組み合わせながら影響をあたえてくれたエピソードを踏まえて「理念」をまとめあげる。
これらの活動を適宜ペアで聴きあいながらすすめます。実際に、自分の取り組みについて大切にしていることをペアに語ったとき、好意的に聴いてもらえることで鏡となり、さらに自己内対話が生まれ、その価値が身に染みたものになるはずです。
本来は、これらにエビデンスを紐付け、今後、解決したいと思う「目標」を明確にし、見直しをしていきます。研修時間の都合のため(じっくり作り込むには2日半かかります)、短縮版として実施しましたが、それでもありあまるほどの心の満足感が残りました。それは、理念を支えてくれていたエピソードを見つける中で、自分自身のルーツは尊敬する先生や子どもたちとの出会いが流れていることに気づけたからでもありました。
教育理念づくりとつい構えがちになってしまいますが、日常にやっていることから出発し、そこに通底している「理念」を導き出すために聴きあうこと、この手順はとても心地のよいものでした。そして、やりたいと思っていた教育実践がなぜ上手く進まないのか、それは、自身の理念と深く結びついていないことが分かり、自分の甘さも自覚することができました。今後、定期的にTPチャートをメンテナンスを続けていけるとよいです。
自分のコアを大切にして取り組めること、それは自分らしさでもあります。学校現場は異にそぐわないことも数多くあります。その中でも、理念を自覚していることは、様々な意見や出来事にも、自分の納得を持って対応していくための指針ともなるはずです。ちなみに私の教育理念は、「好奇心をもつこと、夢中になれること、考えることの面白さを味わってほしい」「人と共に豊かに生き、文化を育てつくる」となりました。
あなたが大切にしている教育理念はなんですか?
★ティーチング・ポートフォリオ研究会HPより抜粋 http://a4tp.info/
HPではTPチャートをダウンロードでき、動画でその作成手順も視聴することができます。
★★栗田佳代子・吉田塁・大野智久 (編著) (2018)「教師のための『なりたい教師』になれる本!」学陽書房(先生向けに書かれたTPチャートの作成・見直し・活用についてまとめてあります)
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