平成元年から始まった初任者研修制度では、「初任者研修」として、「校内研修(OJT)」を週10時間以上、年間300時間以上、さらに「校外研修(Off-JT)」を25日程度という膨大な時間を費やします。しかし、それによって初任者の力量形成がどれだけ図られているでしょうか?
大きな問題を抱えている「校外研修」について今回は触れませんが、「校内研修」にも問題があります。まず、初任者が「初任者指導教員」を「選べない」ということです。「選べる」ようにすることは、現実的に不可能です。それでは、この「校内研修」の問題を解決・改善するためには、どうすればよいでしょう?
■それは、「初任者指導教員」が学び続け、職責を全うできるようにするしかありません。「初任者指導教員」は、最新の脳科学や認知心理学などの知見に基づく「学習科学」、「授業デザイン・カリキュラム開発」や「カリキュラムマネジメント」について学び、そして、初任者の人材育成を効果的に進めるための「コーチング」や「メンタリング」の理論と方法論を学び、身につける必要があります(※このことは、初任者や管理職を含めた教師全員に当てはまることだと思います)。
つまり、「初任者指導教員」には、自ら学び続けることが義務づけられているのです。しかし、不思議なことに、このことは「初任者指導教員」を対象とした研修会で、ほとんど強調されません。おかしな話です。初任者指導教員が学び続けることによって、初任者が教師としての力量をアップできる可能性が大きく広がるわけですから、「学び続けること」が、初任者指導教員の「使命・ミッション」であるといえるでしょう。
実は、私、この4月からある小学校で「初任者指導教員」をしています。週に2日半の勤務で、二人の初任者を担当しています。
■初任者の授業を参観して放課後などに行う授業実践の「ふりかえり」は、『作家の時間』(プロジェクト・ワークショップ編、新評論)の47~73ページに掲載されている「カンファランス」のスタイルで実施することを基本としています。ここに書かれている実践は、正に、人を育てるための「コーチング」や「メンタリング」で大切にされていることと同じなのです。
■授業実践の「ふりかえり」の流れ及び初心者指導教員としての「基本的なスタンス」は、以下のとおりです。
1.初任者本人の授業実践の「自己評価」からスタートする。
2.「プラスのフィードバック・勇気づけ」を多くする。→ 「信頼関係」が生まれる。
3.「質問」を通して、本人の「気づき」を促す。
→ ポイントは、「授業が、子どもが主体の学習になっているかどうか」
4.本人が自分自身で考えるために必要な「情報提供」や「提案」、「選択肢」を示す。→ 情報提供:参考になる本やインターネット上の情報、研究会などを含めて
5.できる限り、本人の考えや希望・やりたいこと・やってみたいことを優先する。
6.一緒に考える。
7.モデルとして示す。→ 「マイクロ・ティーチング」のスタイルで行う。
8.辛抱強く待つ。決して、拙速に一方的に押し付けたりしない。
9.初任者が、気になることや困っていることの確認をし、相談相手になる。
(授業、学級経営・生徒指導、保護者や教職員との人間関係etc.)
10.積極的に校内の先生方に教えを請うたり、アドバイスやフィードバックをもらうことを推奨する。→ 初任者本人が、校内での「メンター」を見つける。
初任者指導教員は、初任者の「伴走者」として、初任者本人と学級の子どもたちの状況を注意深く見守り、初任者の主体性と思いや願いを尊重しながら、初任者の教師としての成長と行動や意思決定をサポートするという重要な役割を担っているのです。
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