そこで、今回は、理科におけるALの具体的な実践例を紹介します。この実践は、「自ら学ぶ意欲を育てるための理科学習」として、かつて私が中学校で子どもたちと一緒に取り組んだ『発展研究』(単元末に行う課題設定学習・課題選択学習)と名付けたものです。
■ 学習活動に対する子どもたちの自己評価と疑問・さらに調べたいこと
私は、理科の授業において、単元のそれぞれの観察・実験ごとに、子どもたち一人一人が、次の5つの観点で、自分自身やペア・グループでの仲間との学習活動について自己評価を行い、「自己評価票」(★ 別添図1)に記録することを通して、自分たちの学習活動の改善に向けて意識するようにしました。
○ 学習内容について
○
観察・実験に対する自分自身の取組・活動について
○
データ処理について
○
観察・実験を通して生まれた「新たな疑問(疑)」
○
観察・実験を通して生まれた「さらに調べたいこと(調)」
例えば、植物の気孔の観察は、ムラサキツユクサで行うことが一般的ですが、私が担当してきた理科の授業では、1年間に及ぶ「マイ・トゥリー(ぼくの木、わたしの木)」の継続観察をしていたので、季節ごとに観察している「マイ・トゥリーの葉の気孔は、どうなっているのだろう?」という疑問をもつ子どもが必ず何人もいました。
また、液体の沸点の違いを利用した物質の分離・蒸留の実験では、水とエタノールの混合液やみりんを扱うことが多かったのですが、ここでは、子どもたちから「ワインやウィスキーでは、どうなるんだろう?」といった疑問が出てきます。
■ 課題設定学習のプロセス
○【課題設定】このように単元の学習を通して生まれてきた・湧きあがってきた「新たな疑問」や「さらに調べたいこと」を、自分自身の学習課題とします。
○【観察・実験計画の作成】その課題解決に向けて観察・実験方法を考えます。
○【学習の見通しと安全面の確認】課題解決の見通し・可能性と安全面のチェックを教師と共に行います。
○【観察・実験】および【記録】自分たちのペースで観察・実験を遂行しながら、対象とする物質や生物の様子や変化・結果を記録します。予想や仮説と異なる結果が出ても、その結果が本当に正しいのかどうかを確かめるために、与えられた時間の範囲で繰り返し観察・実験を行うことができます。
○【考察・討論】観察・実験の結果から「わかったこと・考えられること」、「疑問に思ったこと」、「さらに調べたいこと」について、一人一人が理科の学習者・科学者・研究者としての自覚と責任をもってまとめます。
○【レポート・プレゼン資料の作成】考察・討論した内容について、ペアやグループで話し合いながら吟味・検討をします。さらに、レポートの作成と報告会でのプレゼンテーション資料の作成を行うのです。
○【研究発表】最後に、自分たちが探求したことについて、プレゼン資料に基づいて、探求課題・研究テーマや探求のプロセスと結果について発表を行うとともに、仲間や教師から研究発表についてのフィードバック(意見や感想、評価)をもらうのです。
■ 課題選択学習のプロセス
しかし、子どもたちの中には、理科に対する興味・関心がそれほど高くない子どももいます。「自分なりの疑問」や「もっと調べたいこと」を自己評価票や自分のノート・レポートに書けない場合もあります。そのような子どもたちに対しては、その単元の学習で身につけた知識や技能を活用し、仲間と協力・協同すれば解決できる10個程の学習課題群(単元の学習において一度行ったことのある復習課題・観察・実験も3つほど含む)を準備しておき提示するのです。
子どもたちは、それらの学習課題群の中から自分自身が興味をもった学習課題を選択し、先に述べた「課題設定学習」と同じプロセスで、科学者・研究者として、理科の学習に主体的にかつ能動的に、しかもペアやグループで仲間と協同して取り組むことができるのです。
今回紹介した『発展研究』(単元の学習終了後に行う「課題設定学習」と「課題選択学習」)には、これまでPLC便りで取り上げられてきた「学びの原則」や「ライティング・ワークショップ(WW)が成功する要因」との共通点が多くあるのです。
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