これまでの校内研修の定番は、研究授業・授業研究という手法でしたし、今でも大半の学校はこのやり方を続けています。この手法は今後も初任者の教師には授業の基本的な進め方を学ぶという点では多少は必要かも知れない。しかし、その経験の浅い時期を過ぎた教師にはそれよりも「カリキュラム開発」がこれまで以上に求められるでしょう。
先月パートナーから紹介のあった『イギリス教育の未来を拓く小学校』(マンディ・スワン他 / 大修館書店 )で取り上げられている「限界なき学び」をテーマにしたイギリスでの研究では、校内に「専門領域チーム」を設置しています。このチームは校内のカリキュラムについての責任をもつ役割を担うものです。同書には次のような説明があります。
専門職の学びとは、取り組んでいるものの欠陥を明らかにして直すことではなく、子どもの学びに対する理解を深め、その新しい理解に基づいて実践を開発することです。★
このやり方は、学校で独自のカリキュラムを各教科等で開発していくという方向なので、時間もかかるし、手間もかかるものです。それでもこれをやっていくことが重要なのです。かつて中教審答申にも引用されたホワイトヘッドはその著書「教育の目的」のなかで次のように述べています。
理論的な諸概念は生徒のカリキュラムのなかで、つねに重要な応用例を見付けねばならないということでした。これを実行するのは容易なことではなく、きわめて困難な原則です。ですが、この原則には知識に生気を保たせ、不活発になることを防止するという問題が内在している訳で、これこそ教育全体の中心問題なのです。★★
各学校にはそれぞれ各教科等の年間指導計画が整備されています。各教師はそれを基にして日々の授業を実践しているわけですが、その授業には各教師の個性が反映されたり、それぞれの学級の児童生徒の実態に応じて修正が加えられたりするのは当然のことです。ホワイトヘッドの言葉を借りるならば、「知識に生気を保たせる」ことが授業の中核であり、そのために教師が学ぶことが最も重要であるということです。つまり、校内でカリキュラムをどうするかということを日常的に話し合い、検討し、学校独自のものを作り上げていくことが校内で最も優先されなければならないということになります。そうであれば、校内研修においてもこのことが最優先となるはずです。さきほどのイギリスの小学校のように、校内に「専門領域チーム」を置くかどうかは別にしても、年間の研修計画のなかにカリキュラム開発を位置付けて、時にはこれまでに取り組んだことのない、新しいカリキュラムを開発していくことも必要なのです。
「知識に生気を保たせる」授業ができれば、子供の学習意欲の問題などは一気に解決です。要は、教師がすべて管理して授業の主導権を握るやり方から、子供たちにかなりの部分を任せ、子供たちとのパートナーシップの下に授業を促進するやり方への転換がまったなしに求められているということです。そして、そのためには子どもたちのそれまでの体験、興味・関心、学び方などが一人ひとりみな違うということを教師がしっかりと、今一度自覚することが出発点となるでしょう。
★マンディ・スワン他(新井浅浩他訳)『イギリス教育の未来を拓く小学校』大修館書店、45頁、2015年
★★ホワイトヘッド(森口兼二他訳)『教育の目的』松籟社、
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