「…みんな頑張っているんだなぁ…ってさ。」
学校の核として常に子どもたちのことを考えながら、時に厳しく若手を見つめる主任の先生から言われた一言に、とても嬉しくなった。
長期的な視点で、いつかは組織の文化として根付かせたいという課題意識をもちながら取り組んできたメンターチームづくり。これまではメンターとメンティーという小さな社会の中で完結することが多い関係性であり、取り組みであった。
「メンターメンティー研修って何するの?」
同じ学校組織の中で日々業務にあたっているものの、実際にどんなことをやっているのかわからない教職員が多かったこの研修。しかし、最近、徐々にこのチームづくりの様子が他の先生方にも広まり始めたのだ。
とある学年主任は机に置かれたメンターからメンティーにあてて書かれた、初任者であるメンティーの振り返りに対するフィードバックを見つけてじっくりと眺めていた。席に戻ってきたその初任者(メンティー)に対して
「これ、一人ひとりに書いてもらってるの?」
「はい。メンターメンティー研修で、日頃の振り返りと共に困っていることを相談したり、他に考えられる手立てや実践例を話し合ったりしていて、それは先輩(メンター)方から、初任者(メンティー)が一人ひとりいただきました。」
「…すごいね。細かく見てもらってありがたいね!」
直接、取り組みに関わっていなくても、自分たちの組織の中で、互いに高め合ったり支え合ったりしているということを知り、受け入れてもらうことはとても大切だ。別の機会や違った場面で「育てる」「支える」という意識を持ってもらえる機会となる可能性があるからだ。この意識づけが、「自分も研修に関わりたい」という意識まで動くように、取り組み続けようと思う。
「…なんだかさ、仕事してたら、わらわらと(メンターである)若手が集まり始めてさ。『(メンティーの)〇〇さんは〜だから、教科指導の内容に触れたほうがいいよね。』『体育は(メンターの)Aさんが聴いてあげるといいよね。』『タスク管理は(メンターである)私も初任の時苦労したから一緒に考えてあげてもいい?』とかって話し合いを始めたのよ。事前に初任者(メンティー)にアンケートとって、研修の内容決めたり、(メンターのうちの)誰が(メンティーのうちの)誰とフィードバックし合うって自分が行ってきたことを俯瞰して見たり、新たな課題を考えたり、真剣にでも楽しそうにやってんのよ。自分のことも大変だろうに、学校のために動いてるんだなって。…」
いつも、子どもたちのことを本気で考えるが故に、若手の先生方に厳しい眼差しをむける学校の中核的存在の学年主任との話の中で、私はこれまでの活動が本当に少しずつ、しかし確実に効果として現れていると確信するとともに、本当に心から喜びを感じた。
私は少なからずこの組織づくりに興味をもち、理論を本や研修、ミーティング等を通じて学んできた。そして、理論と実践の往還を少なからず心がけて取り組んできた。だからこそ、私だけが力を入れて取り組んだところで、「支え合う」「学び合う」組織作りは難しいことは分かっていた。他の先生方にどう意識づけて、私がいなくても自分たちだけで取り組めるような組織づくりをどのように進めていけばよいか。これが今、一番の課題だった。その中でのこの話は、本当に大きな成果の一つだと言ってもいい。
先日、今年度最後のメンターメンティー研修が行われた。メンティーである初任者たちにとって現在抱えている自身の学級経営における悩みや教科指導を充実させるための具体的な手立てを共有したり、来年度に向けて子どもたちのために取り組むべき新たな課題を設定できたりすることができ大きな成果が得られた。それ以上に、メンターたちがメンティーたちのことを考え、どのようにフィードバックしたらよいかや考えを伝えるための思考の整理、研修の企画遂行など、多くの力を得ることができたようだった。
「初任者(メンティー)たちの生の声は聴けた。でももっと、話を引き出してあげることが大切だと思う。」
「もっと具体的な事例をもとにフィードバックをしていけば、次、何をしたらよいかが見えやすくなるんじゃないか。」
「まずは、一緒にきちんと向き合えるように、自分自身の実践、引き出しを増やしていかなければ!」
メンターたちとのフィードバックで出てきたこの具体的な次への課題は、小さな波に過ぎないかもしれない。しかし、今後うねりをあげる「学び合う職員室」「支え合う職員室」という大きな波への原動力となると考える。そんな小さな波を大切に、これからも自分にできることを続けて取り組んでいきたい。
以上は、自分の学校での初任者研修を中心に、学び続ける教師集団をつくり出そうと過去3年間努力している教務主任/初任者校内指導教諭の田所昂先生(埼玉県)の今年度最後の実践記録です。