初任者教諭や実習生、およびメンターチームにおけるメンティーである教諭との関わりにおいて大切なことは何か。私はいかに「自分を俯瞰するタイミングを設定できるか」、そして「様々な視点で自分を振り返る機会を設定できるか」だと考える。
先日、以下の記事が掲載され、目に留まった。
https://www.edutopia.org/article/supporting-preservice-teachers-practicum
記事の中で校内指導教諭と実習生や初任者教諭、メンターとメンティーといった関係性における重要なポイントとして以下の5点が提案されている。
1. 明確で具体的なフィードバック
2. デモンストレーション授業の実施
3. ニーズに応じたワークショップ
4. 実際のクラスにおけるサポート
5. メンタル面のサポート
つまり、現状をしっかりと、共に分析する。そして、実践的な対応方法を実際の場面を想定して考えたり、必要に応じてワークショップ等を行ったりして身につけていく。その上で、教室内や実際の指導に立ち会い、指導のサポートを行ったり、日々の悩みや疲れ等に寄り添いながらメンタル面のサポートを行ったりしていくことが求められるということだ。その中でも私は今回、1について着目した。
私は今、初任者3名と向き合っている。それぞれ性別も立場も性格も異なる3名だ。そのうちの1名は初任者指導教諭に毎回、肯定的な言葉かけをされている。
「~ところがいい。初任者としてはもう十分。~をがんばったね。」等
その言葉かけ自体はとても大切だと私も思う。★ 認められれば認められるほどしっかりと伸びる人もいる。ただ、先日、校内研修をしている際、こんなことをつぶやいていた。
「私はまだまだ、全然できていない。どこをどうすればよくなるのか、もっと知りたい。」
そんな彼と私は年間で目標を設定している。『どんな教師になりたいか』という理想の教師像だ。その教師像に近づくために、どんな手立てが必要かを明確にした上で、毎月力を入れる手立てを決める。その手立てに取り組んだ結果を毎月自身で振り返り、私からもフィードバックしている。
このフィードバックを適切にできるように、私は毎日学校を見まわる中で、その様子をしっかりと観察する。実際の場面や指導の様子を共有することで、フィードバックに具体性が増すのだ。フィードバックを受けた初任者は次の月の手立てを決める。
これに加えて、3名の初任者とのフィードバックの時間も不定期ではあるが設けるようにしている。それぞれの初任者から見た、お互いの成長と課題を対話しながら見出していく。そうすることで、自分には見えない新たな自分の一面を俯瞰できるようにする。新たに視野を広げて、よりよい手立てや自分に必要なこと、自分の強みを見つけることができる。そうすれば自己肯定感も高まる一方で課題も見つけ、手立てを思考することができるようになる。一石二鳥だ。
例えば、「個別支援に力を入れる」と決めた月には、自身がどのように取り組めたかのフィードバックを決めたその当人まずはする。その目標とフィードバックは校内指導教諭である私も含めた他の初任者にもデータ入力することで「見える化」されていて、どんな点でうまくいったのか、何が思うようにいかなかったのかが分かるようになっている。
「…○○の教科では~の形で個別支援を行った。すると今まで■■だったものが、□□となり効果を感じた。…」
といった様子だ。そのフィードバックに対して、公開授業や普段の学級経営の様子、何気ない会話から感じた成長した点や努力点について他の初任者からフィードバックが提供される。すると自分に見えなかった視点でその月の努力や変化について考えることができる。
「…前の月に比べて、~~なところを意識していたよね」「公開授業でやっていた△△も個別支援の一つに見えたけど、どう思う?」といった感じだ。
そのやり取りを受けて、私が最終的にフィードバックをする。どんな点が良い変化として表れていたか、見たこと感じたことを自分の視点で伝えられるようにする。その上で、次の目標となりそうな点について「問いの形」を意識して、初任者自身が自分で考えて次の目標を設定できるように投げかける。
「…個別支援を続けることで、分かる・できる思いをする児童が増え、自己肯定感が高まります。学級としてもプラスの雰囲気となりますよね。ちなみに学級の雰囲気という視点でみると、今月の授業態度はいかがでしたか? 授業態度は日々の生活を映し出しますよね。そんな姿からも学級の状態というものがよく分かります。先月は個という視点で見ていたものを今月は学級全体で見てみるとどうでしょうか?…今の学級に足りないものは何ですか?…その足りないものを補うためにできる手立てにはどんなものがありますか?…その中でまず、取り組んでみるべきものは何だと思いますか?…」
このようにすることで、その1か月で努力できたことに自信をもち、加えて次の月への取り組みの手立ての意欲をかきたてることにつながった。
よく「今の若い人の指導は難しい」という言葉を聞く。果たして本当にそうだろうか。そのような発想をすることがよい関係を築くことを難しくしてしまっているのではないのだろうか。「指導する側とされる側」ではなく、共に子どもを見守る教師としてお互いに高め合っていくことができるように、「自分を俯瞰する機会」と「様々な視点をもって自身を振り返ることができる機会」をもつことができるように、フィードバックの充実を図りながら、若手教員の働きやすい環境を構築していきたい。
以上は、1月19日に第7弾を紹介している、埼玉で教務主任/初任者校内指導教諭をしている田所昂先生の第8弾です。
★これはフィードバックとしては、極めて弱いと言わざるを得ないです。『オープニングマインド』(特に、第4章)を参照ください。