先日のとある職員室での風景。何やら若手の先生方が、2人で相談しながら作っている。よくよく見ると先日終えたばかりのメンター/メンティー研修で使用した資料だった。何かお願いしたか、その時の記憶を呼び起こすが、そんな記憶はどこにもない。恐る恐る何をしているのか尋ねてみた。
「こないだの研修の時間では取り上げきれない相談や悩みがあったので、こんな方法があるよリストを作ってます!!」3・4年目とは思えないほどの行動力。そして何も言わずともメンティーのことを考え、動こうとする、その姿勢。やってきたことが報われてきている。そんなことを感じた瞬間だった。
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私が学び、考え、実行してきた本校における研修もいよいよ一番大切な時期に入ってきた。そもそもこの研修は様々な段階を考え、計画したところから始めたのだ。
① 出会い:理論と実践の往還
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② 拡充:2年目を巻き込んだ研修
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③ 成熟:メンターチームの組織づくり
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④ 深化: 学校風土として根付き
①は、当時現職大学院生だった私の立場を活かして、大学院での学びを実践してみるという形で初任者教諭2人と時間をもった。当時を今振り返ると、2人には満足したものを提供できなかった。しかし、このなかで大切だと感じた要素があった。
「勤務時間内に行う」「メンターをメンティーが選べるようにする」「お互いに自分事で必要感のあるものにする」
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次の日。校内を私が巡回していると、職員室で話した4年目の先生が、初任者のクラスを後ろからじっと見つめていた。放課後、声をかけてみた。「何をしてたの?」と。
「この間の研修で出た悩みが実際どのレベルなのか、子どもたちの様子をみてみたくて。実態が分かれば、自分だったら、ということも考えやすいし、他の先生にも相談できるかなと思いまして…。授業をのぞいてました。」
この4年目の先生は何を隠そう、①の時期に私とともに初めてメンター/メンティー研修を行った初任者だった先生である。心の中で、満足なものを提供できなかったことが残っていたので、自分がそこまでいつも考えて見てあげられなかったことや今のような研修が設定できなかったことなどを詫びると…
「こんな研修をやっている学校はないです。それもこれもあの年があったからかと思うとありがたいです。」お世辞でもそう思って、自主的に動き、考えてくれる先生が本当に頼もしい限りだった。
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②・③と毎年少しずつメンター/メンティー研修を繰り返し、研修を経験した先生方が次の年のメンターとなってくれることになった。メンター/メンティー研修のくくりとしてはその初任者がメンティーであり、若手の5年次まで、そして私がメンターとなる。私はここで、大きく考えを広げ、そもそも校内の初任者研修自体をメンター/メンティー・チーム化してしまおうと考えることにした。より多くのベテランからミドルリーダーの先生方に校内初任者研修の各研修担当になっていただき、それぞれの専門や分掌に合ったお話や指導をしていただいた。メンター/メンティー研修のなかでは、初任者と手立てや課題を考える際に、他の校内の先生方の実践や手立てを紹介したり、一緒に確認しにいったりすることも意識的に取り組むようにした。そうすることで、普段から初任者が職員室内になじみ、事案によって相談する相手を選べるように環境づくりを行った。少しずつ自分が描いた形が目の前にできてきている。あとはこの風土を根付かせること。今年度が始まる際、私の中で一番の課題として考えたことである。
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今年度第2回のメンター/メンティー研修は、3年目の先生が中心に企画・運営をしてくれた。なぜその先生が中心に運営しているのか、気になった私。先生に直球で聞いてみた。
「今まで、自分は参加して、言いたいこと言ってきただけなので。こんなことがやったらいいんじゃないか。これが必要なんじゃないか。少し考えてみまして。先輩方(4年目の先生2人)に相談しました。」
この先生は、私が教務主任となり初めてみた初任者である。先日の運動会の打ち上げ。ふらっと傍によってきた先生がこんなことを聞いてきた。
「私、成長できていますかね?」
初任者時代は「辞めないでくれ!」と願っていた先生だった。しかし、今となっては学校の中心となって様々な仕事を任されている。思ったことをそのまま伝え、労うと
「先生に言われるといろんな思いがこみ上げます。いつも話を聞いてくださり、相談にのってくださりありがとうございます」と返してきた。
いえいえ。ありがとうはこちらがですよ。今年度のはじめ、初任者が初めての授業参観を前に、悩み、遅くまで残っていたとき、最後まで初任者に寄り添い、共に流れを考えてくれた先生。
「自分のことで精いっぱいです。」
そんなことを常々口にしていた先生が、学校のためにそして初任者のために考え、動いてくれるようになった。その事実が私の力となり、次の手立てへの活力となっている。今、まさに、本校では「先生方の変革」が起こっている。私も負けていられない。次の一手を打てるように、広い視野をもって、今何が必要かを考え、よりよい学校風土を培えるように今日も、子どもたちそして先生方との対話を重ねていく。
以上は、8月18日、9月21日、10月6日と続いている、埼玉で教務主任/初任者校内指導教諭をしている田所昂先生の第4弾です。