あなたは、子どもたちにいい問いかけ(投げかけ)をしていますか?★
自分がすでに答えをもっているのではなく、本当に子どもの考えを聞くための。
理想的には、子どもたちにさらなる質問をうみ出させるような。
いま、Choice Words (by Peter Johnston)という本の翻訳をしています。
この本のテーマは、子どもたちに考えさせるだけでなく、「教師の発する言葉が、子どもの学びはもちろんのこと、主体性やアイデンティティーを含めた人間性★★を育てる」というものです。刺激満載の本ですので、来春の刊行をお楽しみに!!
問いかけ(投げかけ)は、複雑な必要はありません。
単純な方がいいぐらいです。
あなたの問いかけ=質問の持ち駒には、どんなものがありますか?
たとえば、以下の5つはどんな状況でもほぼ間違いなしの質問です。
(なお問いかけをする際は、同時に「考える間=時間」を十分に提供することをお忘れなく。ある意味では、問いかけと間は同じか、間の方が大事なくらいです。たとえいい問いかけをしたとしても、考える時間が提供されなければ、いい問いかけは台無しですから。)
①あなた(方)はどう思いますか(考えますか)?
②どうしてそう思う(考える)のですか?
③どうしてそれが分かるのですか?
④もう少し話してくれませんか?
⑤他にどんな質問が浮かびますか?
まちがっても、正解を求めるような問い方はご法度です。本当に生徒たちの考えに興味がないときはオープンな質問はすべきではないです(生徒たちに、教師が求める考えを答えるという「正解当てっこ」ゲームのマインドセットに戻してしまいますから)。
以下、簡単な解説をつけていきます。
①の「あなた(方)はどう思いますか(考えますか)?」と問うことで、教師が話しすぎる代わりに、生徒(たち)に考え、そして自分の考えを表明してもらえます。教師は生徒の反応を基に、より適切な指導を行う可能性も開けます。
②の「どうしてそう思う(考える)のですか?」は、①の質問の後のフォローアップの質問で、そのように考えた理由や根拠を明らかにするチャンスを提供します。
③の「どうしてそれが分かるのですか?」と質問することで、質問によって考えたことと自分の経験、読んだこと、見たこと、聞いたことなどとの関連を考えてもらうことができます。
④の「もう少し話してくれませんか?」は、一回目の発言ですべてを言い尽くす人はほとんどいません。まだ言い足りていないと思った時や、何か大切なものが抜けていると思った時のフォローアップの質問として、とても貴重です。
⑤の「他にどんな質問が浮かびますか?」は、教師の頭の中にはなかったような考えや質問を生徒たちから出されるチャンスになります。
なお、教師がクラス全体に問いかけた後、それに答えられる生徒は限定的になりやすいものです(よほど、クラスづくりがうまくいっていないと?!)。それを乗り越える方法がいくつかあります。一つは、全体で出してもらう前に、ペアで話し合ってもらうことです。(この方法を、私は1980年代の後半に『ワールド・スタディーズ』(国際理解教育センター翻訳・発行)を通じて学びました。大人でさえ、4~5人以上の席で発表することは相当に勇気にいることです! でも、2~3人ならハードルは大分低くなります。まずは言い易い雰囲気の中で自分の考えを一度誰かに伝えた後だと、同じことを大人数に対して言うことはそれほどシンドクなくなります。)もう一つは、考える間を提供することにもなる「自分の考えを書き出させる」方法です。これなら、確実に時間が提供されますし、整理することにも役立ちますし、一回書き出しているので言い易くもなります。(臨機応変に、書き出したものとは若干違うことを言ってもいいという自由さというか、柔軟さも提供しています。)
最後に、私のお気に入りの問いかけは、私が関わった本の何冊かで紹介している★★★「五つの思考の視点(5 habits of mind)」です。たとえば、『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』の80ページ、『たった一つを変えるだけ』の281ページ、『リーディング・ワークショップ』の163ページで紹介しています。(なんと、あとの2冊は訳書です! 著者は書いていないのに、訳者が付け加えてしまっています!!)
★ 私に、いい問いかけの大切さを教えてくれた本は、『ワールド・スタディーズ』という本でした。この本、あまりにも内容がいいし、自分だけが知っているのでは申し訳ないと思い、訳してしまいました。(ちなみに、「発問」と「問いかけ」は根本的に違います!)
★★ 人間性(character)には、本書および続編で扱っている多くの特性が含まれます。アイデンティティー、主体性(agency)、態度、ふるまい、心性(disposition)、マインドセット(思考の傾向~これについては本書の続編で詳しく触れます!)、パーソナリティー、気質(temperament)、価値、信念、社会的・感情的スキル(=マルチ能力の自己観察・管理能力と人間関係形成能力)など。ある意味では、学ぶことを通して得る知識やスキル以上に、各人の人生を左右するものとさえいえます。それらを、教室で、教師の言葉を介して、刺激を受けたり、練習したり、磨いていけたりするというのですから、とても心強いです。
一方で、教師が意識することなく言葉を使っていると、負の影響を及ぼしかねませんから、とても恐ろしいものでもあります! この点についても、本書では扱われており、特に第8章(原書の80ページ)をご覧ください。
★★★ いいものは、繰り返し紹介します。その価値がありますから。最も頻繁に紹介しているのは、今回のテーマである問いかけとは直接は関係ありませんが、「学びの原則」です。でも、残念ながら私が紹介するぐらいでは、いっこうに普及しません。なので、もしあなたもいいと思えたら、ぜひ普及にご協力ください。これらが押さえられない限り、いい授業や研修は実現しないことを意味していますから。
参考:
質問を分析する枠組に興味のある方は、
を覗いてみてください。
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