2019年3月10日日曜日

数学的思考はたった二つ。それは、試す「特殊化」と確かめる「一般化」


学年末のこの時期、今年度の学習内容を終えようと教師も子どもたちもやっきになって努力していることでしょう。その中の一つに、のこ勉(居残り勉強)の代表である「計算ドリル」が挙げられます。

「計算ドリルは3周やることで身につきます。しかも家庭からドリル代金をもらい購入したものです。すべて終わらなければ、次の学年にはいけませ~ん!」といった半分脅しのようにせまられることも。

「計算ドリルをやらずに貯めてしまったのは学習者の責任!」と、これまでの教師の継続的な支援を棚上げして、一気に放課後のこ勉でかたをつける。教師も子どもたちもなかなかしんどいものです。

このような繰り返しの計算練習による量をもって、計算が「速く・正しく」できるだけの指導観でとどまっていていいのでしょうか。確かに、子どもたちは計算が好きです。プリントを配布したとき、これまで騒然として教室に静寂がもどり、学習者の誰もが計算を解こうと集中します。

しかし、それは正解を求めることにのみ注力してしまっています。自分にとっての計算の意味や考えることの価値が見いだせてはいません。アルゴリズム練習だけでは、数学的に考える力は身についているとはいえないことを教師もうすうす気づいているのですが、カリキュラムを消化する方にエネルギーを奪われていないでしょうか?

一方、下のような問題をじっくりと考えて解いてみてください★。計算ドリルとは、異なり同じ計算をするにも、学習者にその主体性が発揮され、その解く文脈も意味も生まれてくると思います。



今、試してみてください。結果に、驚くはずです。

きっと、あなたは手始めに100円の商品を使って、値引きから消費税の順で試してみることでしょう。
100円×0.8=80円 80×1.15%=92円

値引きと消費税、どちらかを先に計算することで、最終的な値段はちがうの?といった予想が立ってきます。

消費税からだとどうなるんでしょうか?
100円×1.15%=115円 115円×0.8=92円

アハ(分かったときに出す声)!いっしょだ。では、120円の場合でも同じ事が起こるのでしょうか?

試してみてください!
120×0.8=96   96×1.15=110.4
120×1.15=138 138×0.8=110.4 

アハ!いっしょだ。

きっと、計算機やスマホを使ってやってみると、さらに自分の考えに自信がもてるようになるはずです。いくつかの事例を「試すこと」で、知りたいことや探ってみたい気持ちが増し、問題が自分のものとなってくる感覚が生まれてきます。さらに、「この場合でも成り立つのかな?」と、問題に共通するパターンが気になってくるのではないでしょうか。

このスーパーの問題は、数学的思考について重要な二つの要素を説明してくれます。一つ目は「特殊化」です。問題を実際に解くときや行き詰まったりしたときに「何か試してみたか?」「この特定のケースではどうなるのか?」と実際にやって試してみることです。

スーパーの問題では、商品が100円の場合、値引きから消費税の順で計算をし、92円が求められました。他のパターンはないかを試してみるために、消費税から値引きの順で計算をし、同じく92円が求められました。120円でもそうなるのかを確かめて、より自信をもちはじめました。これらの試してみることが「特殊化」とよばれます。

数学的思考の二つ目が、いくつかの特殊なケースから全体的なケースを予想する「一般化」です。特定のケースから、すべてのケースに当てはまる一般的な結果を導き出すことです。

スーパーの問題では、順番を入れ替えて計算しても、驚いたことに結果が変わりませんでした。ここでうっすらと予想がたってきます。「もしかしたらきまり(パターン)があるのでは?」と。これが一般化への始まりです。それを証明するために、なぜそうなるのか?計算する方法を検討していきます。

商品の値段をPとして、計算すると
最初に値引きを計算すると:P円×0.8×1.15
最初に消費税を計算すると:P円×1.15×0.8
となり、両方は常に等しくなります。これは、4年生で学習する計算のきまりが思い出されます。かけ算は順番が入れ替わっても答えは変わらない(○×□=□×○ )ことに、気がつくはずです★★。

スーパーの問題は数学的思考の大きな部分を占める特殊化と一般化の間を行ったり来たりするという単純な形で示される問題です。つまり特殊化のケースをいくつか集めることで一般化が証明できるということです。答えを知るだけではなく、なぜそうなっているのか?その数学的構造を知るきっかけとなっていきます。



さて、繰り返し計算ドリルだけでは味わうことのできない良問を体験できたのではないでしょうか。習熟の繰り返しの時間だけではなく、このようにじっくりと数学的思考を体験しながら考える時間をバランスよく取り入れてみませんか?ひょっとしたら、数学的思考を身につけるには、一番効果的なように思います。



『教科書では学べない数学的思考 ~「ウ〜ン!」と「アハ!」から学ぶ』
https://www.amazon.co.jp/dp/4794811179/
第1章「だれでも数学ははじめられる」を参照

★★
一般化はここではまだ終わりません。もし値引きと消費税の数値が変わったらどうでしょうか。そのとき、計算する順番が結果に影響するのでしょうか。ここまでは小学校算数だけでは終えられませんが、記号に当てはめて確かめてみます。
値引きをD、消費税をV、元の値段をPで表すと
最初に値引きを計算すると: P×(1ーD)×(1+V)
最初に消費税を計算すると: P×(1+V)×(1ーD)
記号を使うことで全てのケースを一度に処理することができるようになりました。

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